【良明の部屋】
家庭教師、林京太は木村良明に数学を教えています。良明はウンウンと頭を悩ませています。
良明
ウンウン
林
・・・わからない?
良明
ウンウン
林
そうだなあ、因数分解のしかたをもう一度復習してみようか。
良明
・・・はい。
林
それじゃあ、その前のページを開いてみて。
するとノックの音が聞こえてきました。
コンコン。
林
はい
ドアが開きます。
ガチャ。
良明の母、木村由美がおぼんに熱いお茶を
乗せて入ってきました。
由美
勉強中にごめんなさいね。
良明
もう〜、なんだよ。
由美
熱いお茶入れたから、どうかなって、
良明
いらないよ、別に。
由美
あらそう?先生はどう?
林
あ、じゃあ、僕はいただきます。
由美
ほらあ、先生は欲しいって、
良明
もうわかったから、あっち行っててよ。
由美
はいはい、わかりました、
お邪魔虫でしたね。
林
いえいえ、お茶ありがとうございます。
由美
とんでもありませんわ。
林
お茶いただきます。
林は美味しそうにお茶をすすります。ずずず〜。
由美
あら、いい飲みっぷり。
林
ありがとうございます。
由美
あ、そうだ、もう晩御飯の準備できてるので、先生もご一緒にどうですか?
林
え?一緒にですか?
良明
ああ、それはいいね、先生もどう?
林
え?あ、じゃあお言葉に甘えて、いただきます。
由美
お父さんも、楓も待ってますから、早く来てくださいね。
林
あ、はい、ありがとうございます。
由美
今日は、みんなが大好きな豆乳鍋ですよ。
由美はドアを開け、出て行きました。
ガチャ。
林
それじゃあ、休憩して豆乳鍋をいただこうかな。
良明
はい、お腹減りました。
【ダイニングルーム】
林と良明はダイニングルームのドアを開けます。
ガチャ。
大きなテーブルの周りには、木村幸三、木村由美、木村楓が座っていました。
テーブルの真ん中にあるカセットコンロの上には、大きな土鍋があります。その蓋の小さな穴から白い蒸気が勢い良く吹き出ています。
蓋カタカタ。
蒸気シューシュー。
蓋カタカタ。
蒸気シューシュー。
由美
はい、それじゃあ、先生、良明、座って座って。
林と良明は席に座ります。
林
晩御飯まで、ありがとうございます。
幸三
あっはっはっは、いつも良明がお世話になっておりますからな、うちの由美ちゃんの自慢の豆乳鍋ですよ。
由美
ちょっと、お父さん、先生の前で由美ちゃんって言わないでくださいな。
幸三
あっはっはっは、すまないすまない、うちの家内はシャイなんですな。
林
あ、そうですか。
幸三
ほら、楓、挨拶なさい。
楓
よろしゅうたのんま。
林
よろしゅうたのんま!?
幸三
ああ、楓はね、今、関西弁にハマっているんですなあ。
林
関西弁にハマっている!?
幸三
そうです、色んな方言が好きなんです。
楓
うちの豆乳鍋は美味いでおま。
林
美味いでおま??ああ、それは楽しみです。
幸三
それでは揃ったところで、蓋を開けさせていただきますよ、この仕事は私の役目なんですよ、蓋を開けた瞬間のもわもわに注目ですよ。
林
あ、はい。
幸三
よいしょ
幸三は土鍋の蓋を開けます。すると鍋から白い湯気が立ち上りました。
もわもわもわあん。
幸三
あっはっはっは、鍋のぐつぐつにも耳を澄ませてごらんなさい、食欲が掻き立てられますぞ。
全員、鍋の音に耳を傾けます。
ぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつ。
林
ああ、確かに、お腹減ってきました。
幸三
いかがですか、これがうちの豆乳鍋です。
林
これは、とても美味しそうです。
幸三
それじゃあ、豆乳鍋いただこうじゃないか、みんな声を揃えてえ〜、せえの!
みんな
いただきます。
良明
ハフハフ、まろやかあ。
由美
ん〜まあ、お豆腐美味しいわねえ。
幸三
ホフホフ、肉がやわらかいぞお。
楓
ずずず〜、ええやんけ、ええやんけ。
林
とても美味しいです。
みんなの笑い声がダイニングルームに響き渡りました。